江の島への近道 湘南モノレール株式会社

腰越で飲む3

 さて、2軒目に突入します。「しら川」を出てすぐ、はす向かいと言っていい場所に「波平」はありました。日よけ暖簾がかけてあるあたり、商家風でもあるのですが、こちらも、自慢は土地の海鮮。土地のものばかりではなく、北海道から北陸をずっとくだり、山口にいたるまで、全国の魚介のすばらしいところをそろえるという目利きの店だ。もちろんシラスも自慢のひとつで、独自開発の加工技術で、新鮮なシラスをぷりぷりの鮮度のまま保ったり、ユズの香りを仕込んだりと、他所ではやらない試みで魅了する店でもある。

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 そして、絶品のおでんがある。入ってすぐに、たいへんいい香りがしたのだが、それがおでんの汁のたてる匂いだった。ご主人に聞くと、あれこれ混ぜてしつこくするのではなく、出汁の味わいを大事にしているという。なにしろ、羅臼産の高級昆布でおでんの出汁をとっているのだ。もっと言うなら、みそ汁までカツオの2番出汁でつくるという念の入れよう。うまいものを出す。そこに1本筋を通しているのだ。

 たまたま居合わせた常連さんが教えてくれる。
「刺身なら、お任せがいいですよ。任せておけば大丈夫」
 たとえば北海道の魚介なら、昆布のみならず、毛ガニにホッケ、それから東京ではあまり知られていないドスイカといった土地の美味までそろえる。

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 冬場なら、能登の寒ブリも取り寄せるし、アワビは地場の黒アワビを、横浜の市場で販売されているくらいの価格で、調理して出すという。ご主人によれば、アワビにしても佐島のは柔らかく、腰越界隈のは、硬くこりこりしているという。そういう味の違いも分かるという店だから、おでんもうまい。

 種の練り物は、逗子の練り物屋さんから仕入れる。土地の魚介を使う著名な店で、食べてみると、なるほど、素朴な中にも独特の風味があり、歯ごたえもこりこりして非常にうまい。

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 忘れておりましたが、こちらで飲んでいたのはイモ焼酎「三岳」の水割り。淡い上品な味わいのおでんには、イモ焼酎の中ではすっきりとしたこの銘柄がよく合うのです。ますます、楽しい夜になってきた。

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フリーライター。1963年東京生まれ。
酒と酒場を中心に、取材記事やエッセイなどを執筆。著書に、「酒呑まれ」「多摩川飲み下り」(ちくま文庫)「五〇年酒場へ行こう」(新潮社)、「最高の日本酒 関東厳選ちどりあし酒蔵めぐり」(双葉社)などがある。
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