江の島への近道 湘南モノレール株式会社

住宅街のタイムトリップ空間・鎌倉中央公園

さいきん樹が気になる。

何かままならないことがありむしゃくしゃするとき、無心で樹を見てしまうことがある。

ご神木もいいが、なんてことない樹だって十分に味わい深い。中でも私が心惹かれるのは、まっすぐ素直に生えている樹よりも、ありえないほどねじくれてたり、コブででこぼこだったり、根っこが蛇みたいにのたうちまわっていたりする、ちょっといびつな形の樹々だ。

ご参考までに、私がこれまで出会ったとっておきの樹をいくつかご紹介したい。

1-1.JPG 熟女のお尻みたいな樹

1-2.JPG犬神家

1-3.JPG 巨人の行進

とりたてて樹種や生態に詳しいわけではない...どころか、むしろちんぷんかんぷんなくらいだけど、こういう奇怪な形の樹を見ると、言葉で説明のつかないような胸騒ぎを覚えてしまう。

樹の今ある姿形は、もともと持つ特徴に加え、病気、生える場所の地質、光や風、人為的な剪定など、樹の周辺で起こった様々なできごとを体現している、と何かの本で読んだことがある。つまり壮絶な形をした樹ほど、いろんなできごとを乗り越えてきたのだろう。人間だと化粧や整形や洋服でごまかせるかもしれないが、樹の場合、これまで歩んできた道のりがもろにカタチに出てしまうということだ。そう思うと、なんだかとてつもなく不思議な生命体に見えてくる。

樹がたくさん見られる場所といえば、森。

なにげなくGoogle Mapの航空地図で湘南モノレール沿線を眺めてみると、ところどころ緑濃い場所が点在しており、住宅街の中でそこだけぽっかりと空いた真空空間みたいだ。どうやら公園として開放されている場所もある。

あの緑のカタマリにダイブして、心ゆくまで樹を見て回りたい。

そんなわけで、沿線の公園を探索してみることにした。

目的地は、鎌倉中央公園、片瀬山公園、夫婦池公園、鎌倉広町緑地だ。

いずれもモノレールの沿線駅から歩いていける距離にある。

image4.jpg

イラストマップ

最初に目指すのは、湘南町屋駅から徒歩約12分ほどの場所にある鎌倉中央公園。住宅街の奥にひっそり佇む静かな公園だ。

駅から公園に近づくにつれ、家々の屋根の向こう側に、ところどころ樹々がわしゃっと頭を出しているのが見えてくる。

頭を出すどころか、家屋の間に急に森がひょっこり出現したような場所もあった。周囲の造成された住宅地の中、そこだけ森が取り残されちゃったみたいな光景がなんだかおかしい。

1-4.JPG住宅地にボフッとはみだす森

『かまくら・山崎 谷戸と暮らし』(山崎・谷戸の会)という本によれば、鎌倉中央公園を含む一帯は「山崎の谷戸」と呼ばれ、かつては谷戸の地形を生かしあちこちで農業が営まれていたらしい。その一部が公園となり、いまも地元の方の手によって、公園内に谷戸の農村風景や昔ながらの農法が守り継がれている。入口付近こそ、アスファルトで整備された道路や芝生の広場など都市公園の雰囲気があるものの、奥に進むにつれ徐々にかつての農村風景の面影が現れ、タイムトリップ感を味わえる。

1-5.JPG 園内マップ

「しし石」と呼ばれる巨大な石を横目に奥にずんずん進んでいくと、田んぼの近くの広場に生えていた樹に目を奪われた。

タラコ唇みたいな穴が2つ空き、穴のすぐ上はブツッと真っ直ぐに切られている。手前の穴は大きく口を開けているが、向こうの穴はややすぼまっている。よっぱらいのおっさんが肩を組んで歌っているみたいだ。

1-6.JPG歌っているみたいな樹

広場の脇の小道を進んでいくと、向こうの方に土がむき出しになったつるつるの斜面が見えた。近づいてみると、斜面の上に土から飛び出た樹の根っこが暴れるように浮いており、上の樹々の間から蔦がぶらりと半月状にぶら下がっている。

なんだここは。

1-7.JPG暴れ狂う根っこ

あとから聞いたところによると、この蔦はブランコらしい。斜面がつるつるだったのも、きっと子どもたちが駆け上がったり滑ったりしたためだろう。

この日は寒い平日だったせいか遊ぶ子どもは一人もいなかった。暴れ狂うような根っこの迫力もあいまって、なんだか異様な一角だった。

1-8.JPGスリル満点そうな蔦のブランコ

ふたたび広場に戻り、さっきとは別の散策路を進むと、視界を包む草木の密度がさらに濃くなり、ちょっとしたハイキングコースとなる。落ち葉を踏みしめながら散策路を進んでゆくと、樹がまばらに生えた「疎林広場」にたどり着いた。

広場の入口付近では、樹同士がこんがらがって立っていた。

1-9.JPGこんがらがる樹

後ろの樹が手前の樹にじゃれあって絡みついてるみたい。樹皮を見ると別の種類の樹のようだ。上から下から何本も触手が絡み、そうそう簡単に離れそうにない。

1-10.JPGめっちゃ絡みついている

樹なりのいろんな事情があって、こんな複雑な絡み方になったのだろう。樹同士で相性はあるのだろうか。「おいオメー、勝手に絡まってくんなよ」みたいな状態で何十年も過ごす場合もあるかもしれない。

こんがらがる樹の近くには、海藻みたいにゆらゆらと四方に枝を広げる樹が生えていた。

1-11.JPGゆらゆら波打つ樹

根元から上を見上げると、海の中でフワフワと浮遊しているような気分になってくる。こんな悠々自適な佇まいもまたいい。

こうやってひとつひとつ形の違う樹の佇まいを頭を空っぽにして眺めているだけで、時間を忘れてしまいそうになる。

それにしても、かつてはここで人の生活が営まれていたことを思うと、なんだか不思議な気持ちになる。途中すれ違った子どもが、横の父親に「ねぇ、なんでここはこんなに怖いの?」と尋ねていたのが印象的だった。この日は人がいなかったというのもあるけど、日常空間の延長にありながら、日常と切り離されているような、妙な場所だ。

出口が近づくと、次第に地面が落ち葉からアスファルトに変化していく。徐々に現実世界に戻っていくみたいだ。

外に出たら急に、目の前の光景が住宅街に早変わりした。白昼夢でも見ていたような気分だ。

鎌倉中央公園は、住宅街の中のタイムトリップ空間だった。

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鎌倉中央公園

所在地:鎌倉市山崎1667番地

アクセス:湘南モノレール湘南町屋駅から徒歩約12分

開園時間:8:30~17:15 (7、8月は7:30~18:00)

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村田あやこ(続編)
路上園芸鑑賞家。福岡県生まれ。大学では地理学を学ぶ。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。植物への興味が尽きず園芸装飾技能士の資格も取得。『街角図鑑』(三土たつお編著・実業之日本社、2016年)に路上園芸のコラムを寄稿。好きな植物はアロエ、シェフレラなどの丈夫な熱帯植物。TwitterInstagram @botaworks
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