江の島への近道 湘南モノレール株式会社

レールにぶら下がるスタイルは激しい動きを可能にする

 ひと口にジェットコースターといっても、さまざまなタイプがある。
 まずそこから整理しておきたい。
 一般的なのは、トロッコのような列車に乗ってレールの上を走っていくタイプで、大きく分けてスチール製と木製がある。これについては説明は不要だろう。

02トロッコ.jpg

 これに対しレールの下にリフトのように座席がぶらさがっているものを、インバーテッドコースターと呼んでいる。これはトロッコ型に次いで数が多い。

03インバーテッド.jpg

 そのほか立って乗るジェットコースターや、

04スタンディング.jpg

 シートだけがあって車体がなくむき出しのまま走るフロアレスと呼ばれるタイプ(日本にはない)、

05フロアレス.jpg

 車体が横長で横に8~10人が並んで乗り、レールの横にはみ出しているダイビングマシンと呼ばれるタイプ(これも日本にはない)、

06ダイビングマシン.jpg

 腹這いになって空を飛ぶようなスタイルで乗るフライングタイプ(USJの「ザ・フライング・ダイナソー」やナガシマスパーランドの「アクロバット」)、

07フライング.jpg

 座席でレールの横ででんぐり返りながら走る四次元タイプ(富士急ハイランドの「ええじゃないか」)、

08四次元.jpg

 など、ひと口にジェットコースターといっても、その形はさまざまである。
 湘南モノレールが近いのは、インバーテッドコースターということになるだろう。
 レールの下にぶら下がって走るのはこのタイプだけだからだ。(厳密にはサスペンデッドコースターといって、船のようなゴンドラに乗ってレールの下を走るタイプもあるが、主に子供向けが多い)

09サスペンデッド.jpg

 ではインバーテッドコースターの魅力とは何だろうか。なぜわざわざレールの下を走るのか。
 そこには足元に何もなくてスリルが増すというだけでないもうひとつの理由がある。
 それは振り回しやすいという点だ。
 インバーテッドコースターは、通常のトロッコ型にくらべて振り回しやすい。ダイナミックな動きが可能になる形なのである。
 どういうことか説明しよう。
 たとえばループで考えてみる。
 コースの途中にある垂直ループはジェットコースターの動きのなかでもとくにスリリングな部分だが、急激な旋回では遠心力の働きで乗客に大きなGがかかることになる。垂直ループを回っている間、乗っている人は首や肩がいつもより重くなり、ぐいぐいと床に押さえつけられるような不自由さを感じるのである。

10垂直ループ(トロッコ型の場合).jpg

 ところが、インバーテッドコースターの場合は、遠心力がレールから離れる方向に働くから、乗客は体が床に押さえつけられることなく、逆に空に解放されるような気持ちで旋回する。

11垂直ループ(インバーテッドの場合).jpg

 垂直ループに限らず、これは横旋回の時でも同じ理屈で、ぶらぶらしているおかげで、急なカーブでも気持ちよく曲がることができるのである。
 トロッコ型のジェットコースターには大きなコブ(キャメルバックと呼ばれる)を上がったり下りたりするタイプが多く、インバーテッド型のジェットコースターにループや旋回が多いのは、そういう理由による。ぐるんぐるん振り回しても乗り心地が悪くならないのが、インバーテッドの魅力というわけである。
 そして懸垂式モノレールにも同じことが言えて、レールの下にぶら下がるのはカーブの多い路線に都合のいい形なのである。湘南モノレールが懸垂式なのは、ジェットコースターみたいにダイナミックに走らせたいのかもしれない。そのうち途中に垂直ループができたりするのでは?
 垂直ループのあるモノレール。いいかもしれない。

12垂直ループ(モノレールの場合).jpg

 さらに付け加えるなら、懸垂式モノレールのほうが跨座式モノレールよりも風に強いとも言われている。これも車体の重心がレールの下にあることが関係している。上に乗っかっているものは風で落ちる可能性があるが、ぶらさがっているものはぶらぶらして風を受け流すから、落ちる可能性が低いわけである。
 こうして懸垂式は、跨座式では不可能なダイナミックなルートを走ることが可能になったのである。(つづく)

LINE
Twitter
facebook
google+
hatenablog
宮田珠己ポートレート
宮田珠己
エッセイスト。
ジェットコースター、変なカタチの海の生きもの、巨大仏、ベトナムの盆栽、迷路のような旅館、石などに興味を持ち、好き勝手に執筆。旅が大好きだが、飛行機が苦手で苦悩している。
主な著書は『ジェットコースターにもほどがある』『晴れた日は巨大仏を見に』『ふしぎ盆栽ホンノンボ』『四次元温泉日記』『いい感じの石ころを拾いに』『だいたい四国八十八カ所』『ときどき意味もなくずんずん歩く』『私なりに絶景』など。
著者のご紹介
mr.ブラーン
佐藤淳一ポートレート
乗らずにいられない、懸垂式モノレールの魅力
佐藤淳一
ドボク+動物のかけもち写真家
宮田珠己ポートレート
湘南モノレールはどのぐらいジェットコースターなのか
宮田珠己
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
宮田珠己(続編)ポートレート
5つの面白レールを1日で。ゆかいなのりもの大冒険!
宮田珠己(続編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
村田あやこポートレート
路上に潜む異世界を求めて ー湘南モノレール沿線 路上園芸探索ー
村田あやこ
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(続編)ポートレート
湘南モノレールから歩いていける森巡り
村田あやこ(続編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(変形菌編)ポートレート
ルーペの向こうのちいさな世界
村田あやこ(変形菌編)
散歩と植物好きの会社員
太田和彦ポートレート
大船で飲む
太田和彦
作家。旅と酒をこよなく愛する
八馬智ポートレート
土木構造物としての湘南モノレール鑑賞術
八馬智
ドボクの風景を偏愛する都市鑑賞者
西村まさゆきポートレート
湘南モノレールの昔と今を比べてみる
西村まさゆき
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(続編)ポートレート
開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅
西村まさゆき(続編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
大船ヨイマチ新聞ポートレート
よい街 オーフナ
大船ヨイマチ新聞
大船のフリーペーパー。昼は「良い街」夜は「酔い街」。
皆川典久ポートレート
地形マニアと鉄ちゃんの凸凹乗車体験記〜湘南モノレールに乗って〜
皆川典久
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
皆川典久(続編)ポートレート
湘南モノレールに乗らずに
皆川典久(続編)
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
能町みね子ポートレート
ほじくり湘南モノレール
能町みね子
肩書きに迷いつづけ、自称「自称漫画家」。散歩好き。
ドンツキ協会ポートレート
ドンツキクエスト in 湘南モノレール
ドンツキ協会
ドンツキ協会は東京の路地の町、向島を拠点に、袋小路『ドンツキ』の研究に取り組む団体。
大谷道子ポートレート
湘南モノレール運転士インタビュー 「運転する人どんな人」
大谷道子
ライター・編集者。
井上マサキポートレート
湘南モノレールの「まっすぐ路線図」を鑑賞する
井上マサキ
路線図を鑑賞するライター
鈴木章夫ポートレート
湘南モノレールバー人図鑑
鈴木章夫
誰かをちょっとだけびっくりさせるのが幸せ。かまくら駅前蔵書室(カマゾウ)室長
二藤部知哉ポートレート
ソラdeブラーンdeラーン
二藤部知哉
沿線在住のんびりブラーンランナー
いのうえのぞみポートレート
湘南フォトレール カメラを持って湘南モノレールに乗ろう!
いのうえのぞみ
モデル・タレントで世界一周を目指すカメラマン
大村祐里子ポートレート
フィルムdeブラーン
大村祐里子
フィルムカメラをこよなく愛する写真家
川口葉子ポートレート
モノレールdeカフェ散歩
川口葉子
都市散歩と喫茶時間を愛するライター、喫茶写真家。
松澤茂信ポートレート
湘南別視点ガイド
松澤茂信
東京別視点ガイド編集長。珍スポットとマニアのマニア。
川内有緒ポートレート
湘南トライアングルをめぐる旅
川内有緒
ノンフィクション作家
田中栄治ポートレート
MonoTube
田中栄治
地上と空のスピード感を追い求めている素人カメラマン
三土たつおポートレート
本物の車内アナウンスが楽しすぎた。
三土たつお
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
杉浦貴美子ポートレート
食べる!湘南モノレール -湘南「地形菓子」制作奮闘記-
杉浦貴美子
地図・地形好きライター
今泉慎一ポートレート
〝もののふ隊〟駅前砦にあらわる
今泉慎一
旅・歴史・サブカル好き編集者兼ライター
ワクサカソウヘイポートレート
車窓の冒険
ワクサカソウヘイ
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
半田カメラポートレート
大船観音の劇的楽しみ方
半田カメラ
大仏写真家
モノ喜利(井上マサキ)ポートレート
モノ喜利
モノ喜利(井上マサキ)
めざせ!最優秀ブラーン賞
ヴッパータール空中鉄道座談会ポートレート
ヴッパータール空中鉄道について思いっきり語る
ヴッパータール空中鉄道座談会
ヴッパータール空中鉄道に乗車した人たち
モノ散歩ポートレート
モノ散歩
モノ散歩
沿線の魅力が集結!
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)ポートレート
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)