江の島への近道 湘南モノレール株式会社

湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く(3)

■GPS地上絵の移動の不思議さ

前述したGPS地上絵の「第3の移動」っぷりをよく表すのが「Uターンして引き返す」だ。どんな地上絵でもそういうルートが発生する。鎌倉ヤギの場合は4箇所あった。

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(c)OpenStreetMapへの協力者

ペンや筆で描く絵なら、紙から先を離すことができる。だが、GPS地上絵はいわば「一筆描き」だ。途中で止まった線を描くには行って戻ってこなくてはならない。人は空を飛べないし、瞬間移動できないから。

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20名がなんてことはない道の途中でやおらUターンする光景はなかなかおもしろい。

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このような行動は、ふつうは道に迷ったときにしかしない。しかしGPS地上絵にとっては大事な一筆。GPS地上絵の移動の不思議さ、「第3の移動」っぷりを実感する場面である。

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問題は、このUターンが坂だった場合。平坦な道ならまだ「不思議」ぐらいですむが、坂道だとそうはいかない。そして急峻な地に生息する鎌倉ヤギにはやっぱりそういう箇所があった。右前足付け根の部分だ。

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振り向くと江ノ島が。そうとう登ったぞ。

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そして登り切ったところで引き返すのだ。息が上がった一同。「登っただけかー」とおもわず笑ってしまった。

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頂上で何をするわけでもなく、降りてくる。筋トレか。

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もうひとつの坂道Uターンは右後ろ足。

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ここでは行き着いた山頂にお寺があった。きけば「ぼたもち伝説」という言い伝えと関係があるお寺のとのこと。境内をいろいろ見て回りたいところだが、動き回るとそのログが残ってしまう。素早く下山するのみだ。このようにGPS地上絵とはなかなかストイックな遊びなのだ。修行のよう。

■ビル80階まで登ったのと同じ!

冒頭から繰り返し「鎌倉ヤギは地形が豊かな場所にいる」と書いてきた。ここで地形図を見てみよう。

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スーパー地形アプリが表示する国土地理院基盤地図情報数値標高モデルの画像をキャプチャ・加筆加工)

こうしてみると、やはり凹凸がはげしい。丘陵部がヤギの内臓のようにも見える。首から前脚にかけての曲線は、神戸川(ごうどがわ) の流れに沿ったものだということが分かる。さきほどの右前脚付け根の登って降りるUターンの高低差も見て取れる。

こうして見ると、湘南モノレールがいかに地形が複雑なところを苦労して通っているかもよく分かる。江ノ電とは大違いだ。

あと、今回のコースとは関係ないが、背中より外側のエリアの地形が宅地開発によって平らにならされているのが面白い。ヤギの体の中は丘陵地と低地の狭間にあって、入り組んだ崖地が多いので面的な開発がされず、結果として比較的元の地形が残っているのだろう。

......なんていうマニアックな地形観察はおいておいて。上の地形図を見ると、コース中最も急峻な崖を登っているのは尻尾であることがわかる。

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実際、ここはもっともしんどい登り坂だった。しかもコース後半で疲れてきたところへの登場。宮田さんも「ここ登るの......?」って感じだ。

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尻尾、恐るべし。

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登り切ったところがまさに尻尾の先端なのだ。

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上ってきた階段を振り返ると、

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ここでも遠くに江ノ島が見えた。

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「スーパー地形」アプリによるグラフ画像をキャプチャ・加筆加工)

スタートからゴールまでの登り降りをグラフにしたものが上だ。ご覧の通りのアップダウンっぷり。なんと全ての登った高さを合計すると245mにもなる。ビル80階まで階段で登ったのに相当する。そりゃしんだいわけだ。

やっぱり尻尾に登ってく部分が最大のピークだ。このグラフを見るだけであのときのしんどさがよみがえってくる。

後半に高低差の激しい登り降りが来ているのが効いた。鼻先をスタートにして、時計回りに回ったのには特に理由はなかったのだが、もし逆回りに回っていたらずいぶん描き心地が違ったのではないだろうか。

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大山顕
ドボクフォトグラファー/ライター、そしてGPS地上絵師。主な著書に『工場萌え』『団地の見究』(共に東京書籍)、『ショッピングモールから考える――ユートピア・バックヤード・未来都市』(東浩紀との共著、幻冬舎新書)、『立体交差/ジャンクション』(本の雑誌社)など。
https://twitter.com/sohsai
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