江の島への近道 湘南モノレール株式会社

スリバチドンツキ、そして...

さてここまでめぐってきたドンツキは何かとモノレールがらみの案件であったが、次は違ったものを探求してみよう。
湘南深沢駅から西鎌倉駅方面へ、モノレールもトンネル区間となる、地形の変化の大きな区域だ。
鎌倉市の市街地側では、「谷戸」と呼ばれる三方を山に囲われた谷あいの地形、いわばスリバチに古くからのお寺や居住地がさかえ、その郷土の風景の特徴となっている。そしてその特徴はひとつ鎌倉山を隔てたこちらモノレール沿線にもあり、その地形からも、谷あいに向かって道の行き止まるドンツキであるところが多い。
すなわち、スリバチドンツキである。
住所でいえば鎌倉市手広ということになろうか。一見この地域は、等間隔均一均等に立ち並んだ計画的に宅地化の進められた現代的な住宅街ばかりであるけども、山ぎわに目を向けるとはるかそれ以前からあり続けたであろう集落の姿が垣間見える。
「ここですよここ」と指し示す先には石積みの塀や刈り込みの行き届いた生け垣、そしてその奥では谷地に向かって上り坂になりつつ、一軒の広い庭の、離れもある農家にてドンつく。

ドンツキ (9).jpg
日本の道百選ドンツキ。この先がドンツキとは思えない。


谷戸は稲作の適地でもあり、日本の原風景のひとつともいえ、我々が三方を囲われたドンツキに安寧を覚えるとすればこのようなところに原体験があるのかもしれない。
「この道は『日本の道百選』に入れても恥じないと思いますよ。百選の中で唯一ドンツキ」とか
「他の百選の道にはドンツキは無かったんですか」
「いや調べてないけど」
ゆくゆくは「日本のドンツキ百選」というのも選定するのも良いかもしれない。

ドンツキ (10).jpg
大きな農家の前でドンツキ

「さいごのドンツキは・・・?」

これまで何とか耐え忍んできた雨であったが、ここにきて雨足が急速に強まり、坂道などは滝が下るようであった。さすがにこれ以上の探索は危険であるとみて、やむなく引き上げることにした。
「最後に訪ねたかったドンツキは鎌倉山の山頂にあって、晴れていれば山頂からは大山が眼前に望める『絶景ドンツキ』を用意していたんですけど、、、。どのみちこの天候では遠くまで見えそうにないですし」
ドンツキなくとも心晴れやかなるべし。続きはまたの機会ということで、 これにてドンツキクエスト、ひとまず終了!!

私どもドンツキ協会は今回ご紹介したように、人がふだん日常生活を送る上では気にもとめない空間を求め歩く「ドンツキクエスト」なる、まちあるき・観察イベントを開催しています。
そういえば、今回ご同行いただいた村田さんから、
「協会のみなさん、このドンツキは良い、とおっしゃってましたけど、『良いドンツキ』ってどのようなものなのでしょう?」と、根源的ながらごもっともなご質問がありました。
私たちの訪れるドンツキという空間は、観光地でないどころか、地元の住民ですら訪ねたことのない場所ばかりです。でも、「この道は昔、エラい殿様がつくったもので...」「この道は太古の地殻変動によって云々...」といった、特別な来歴のある場所だけが、そのまちの全てでしょうか。もっと生活に近いごくごくありふれた空間にこそまちの個性は語られるのでは。そんな空間を見たまま、あるままを感じることを私たちのまちあるきでは大切にしているのです。
ドンツキクエストはつまるところ、行き止まりを行っては戻り、の一見たいへん非合理的なまちあるきですが、見方を変えれば同じ道でも行きと帰りで違った風景を眺めることができる、ともいえます。見知った町、あるいは住み慣れて知ったつもりでいるまちでも新たな発見をする、絶好の方法なのかもしれません。

ここ湘南モノレール沿線でも、「知っているつもりだけど知られていない道」まだまだきっとありますよ。

ドンツキ (11).jpg晴れていれば大山や富士山が望める。鎌倉山のドンツキ

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ドンツキ協会
東京の下町、墨田区向島でまちに数多く存在する行き止まりの道、すなわちドンツキをまちの個性として捉え、その観察・研究また表現活動により、ドンツキと徹底的に向き合い、関わり合いながら、ドンツキの地位向上に努めることを主旨としています。
ドンツキを巡るツアー「ドンツキクエスト」のほか、ドンツキを活用したイベントを不定期に開催。「タモリ倶楽部」「アド街ック天国」ほかテレビ・新聞・ラジオ等にも多数出演。
ドンツキ協会 
http://dontsuki.wordpress.com
http://www.facebook.com/dontsuki
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