江の島への近道 湘南モノレール株式会社

懸垂式モノレールひとすじ110余年、ヴッパータールを訪ねて

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美しいんだかうっとおしいんだかよくわからない町、ヴッパータール

ドイツ西部、ルール地方の山間の工業都市ヴッパータールで1901年から営業しているこの空中鉄道は、ドイツ語ではシュヴェーベバーン(Schwebebahn:直訳すると宙吊り鉄道)と呼ばれる。なんとも直球な名前である。レールが1本とかそういうことはもはや眼中になく、吊ってる点だけを100パーセント推してくるところなどちょっと確信犯的だ。

路線の総延長13.3キロのうちなんと約10キロが川の上で、残りもすべて車道の上に設置されている。ヴッパータール中心部は谷に開けたような町で、平地がないから鉄道を通すにはこうするしかなかったからやった、というような風情である。川の上も道の上も基本的な構造は同じで、川や道をがばっとまたぐ門型の鉄製構造物の下に複線のレールが吊り込まれており、その下を行くのは延々と股くぐりをしてるような感じがする。

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ぽっちゃりかわいいモノレールのピクト

これはモノレールの駅を示すピクトグラムだ。ぽっちゃりボディがかわいい。しかし、よく考えたらこんな標識いるのだろうか。どこを通っているかわからない地下鉄だったら標識は必要だけど、これだけ自己主張の強い地上設備と、ド派手な車両が空中を飛ぶように走っているのだ。もうそれだけで存在は十分アピールされていると思う。

駅の入り口にはちゃんと駅名なども書いてあるので、このピクトは実用のためだけのものとは思いにくい。ひたすらモノレールを盛り上げたい一心で立ててあるようにも見える。たとえて言うならお祭りの提灯みたいなものなんじゃないか。そんなヴッパータールじゅうにあふれるモノレールへの愛を感じ、わたしの気持ちも盛り上がるのであった。

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「降りるとき注意。車両はスイングする!」が計11回

さて、懸垂式のうちでも元祖ランゲン式はとりわけ揺れるものだ。ヴッパータールでは、そこのところも魅力のひとつとしてちゃんと自覚的である。この車内掲示では注意文が11回ぐらい繰り返されていてしつこい感じがするが、実際、慣れない他所者にとっては注意が必要。こころして乗り降りしないとうっかりホームと車両の間に挟まりそうな感じがする。この写真がブレているのはわたしの問題でもあるが、車両のやんちゃなスイングっぷりもまた大きく貢献している。

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車内はこんな感じ

シートはこのように進行方向の左側にしかない。お客さんがみんな座ったら重量バランスが取れなくなるような気がするが、どうなのだろう。それとよく見ていただきたいのが、前向きのシートしかないところ。進行方向が反対になったときはどうするのか。この簡単だけどがっちり作ってあるシート、レバーで方向転換などできるようには見えない。

実はヴッパータールは車両まるごと方向が固定されているのだ。つまり湘南モノレールのように終点で折り返すのではなく、終点がぐるっとループになっている。だから先頭部はいつも先頭のままで進行方向だけが変わる。途中駅で折り返したりはできないのでなにかと不便ではないかと思うのだが、とにかくそうなっている。この方式はおのずと複線になるし、ぜったいに正面衝突とかしないのですごく合理的なような気もするけど、途中で分岐などをさせようとしたときにいったい路線レイアウトはどうなるのか。考えただけで夜寝られなくなる。

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ランゲン式の走行メカニズム。横揺れを止める積極的な仕掛けは・・・ない!

日頃から懸垂式の十八番はホットなコーナーリングだと思っているが、ランゲン式の走行感覚はやはりすごかった。ほんとにこれって公共交通機関?アトラクションなんじゃないの?と思う瞬間があるのは湘南モノレールも一緒だが、スイング自由度の高いランゲン式のコーナーでのバンク感には、やはり熱きゲルマンの血を感じる。この人たちは心の底からこのゆらゆらメカニズムが好きで動かしてるんだろうと思う。スイングしなけりゃ意味がない、ってのはヴッパータールのためにあるテーマだ。ヴッパータールに乗ったことがない者にスイングを語る資格なし、とも言ってしまおう。何の話だかよくわからなくなってきた。(つづく)

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佐藤淳一
土木構造物と動物という、かけ離れた領域をうろうろするあまり類を見ない写真家。武蔵野美術大学デザイン情報学科教授。2008年宮城県芸術選奨受賞。著書に「恋する水門」、「ドボク・サミット」、「カワウソ」などがある。
「タモリ倶楽部」に出演したこと、「東京スポーツ」で連載を持ったこと、ズーラシアと海遊館で写真展を開催したことが自慢。
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