江の島への近道 湘南モノレール株式会社

「味喜」は開店時間前から満席になる

 その店がモノレール駅からほど近い「味喜」と聞いても驚かなかった。

kitao3_01.jpg

 開店前から掃除に精を出していた店の一つだったのだ。ここは外観もいい。とりわけ看板の書体がザ・昭和な雰囲気だ。

kitao3_02.jpg

 と、入店してびっくり。開店早々なのにほぼ満席なのである。聞けば、準備が整いすぎて、それを察した常連客が開店前から入ってきてしまったとのこと。たぶんよくあることなのだろう。ご主人も客も、そんなこと気にしていないのが素晴らしい。
 赤いカウンターと白いテーブル席のみの手頃なサイズ感。カドの上のほうにはお約束のテレビが置かれ、ワイドショーが流れる、教科書的町中華。創業1970年のカンロクがそこはかとなく漂う。
 壁には黄色いメニュー表がどーんと貼り出されて、定食類は別の貼り紙に分けられている。カレーライス、カツ丼、オムライスの"町中華三種の神器"が勢揃いしているのが頼もしい。おふくろラーメン(おにぎり付ラーメン)やイタメソバ(太麺の上海風焼きそば)も魅力的だが、食べ過ぎると後が続かなくなり悩ましい。

kitao3_03.jpg

 じっくり観察するとメニュー表ひとつにも店の歴史が現れているもので、この店の場合は書体その他から創業時もしくは初期に貼られたものと推測できる。消されているのはわずか3箇所。ほとんどが昔と変わっておらず、値段だけが何度か更新されてきたものと考えられる。肉野菜炒め(700円)と酢豚(1150円)の間には何があったのだろう。回鍋肉あたりか。酢豚の下の空欄はエビチリか。そんなことより酢豚の根強い人気について思いを巡らせるべきだろうか。メニュー表だけであれこれ楽しめるのだ。
 さてと、何にしよう。宮田さんは炒飯を選択。となると僕は麺類にしたい。
 先客は何を食べているかと見回すと、明らかな偏りがある。圧倒的にサンマーメンが多いのだ。サンマーメンは神奈川県では普通のメニューだが他地域にはあまりない。よし、これにしよう。
 あっという間に出来上がってきた。知らない人に説明するとしたら、餡かけタンメンとでも言えばいいだろうか。あるいは豪華なもやしそばか。間を置かず炒飯もやってきた。ひと目で分かる、絶対ハズレのない炒飯である。

kitao3_04.jpg

 せーので食べ始めたら箸が止まらない旨さだった。サンマーメンは餡ものの鉄則である"超アツアツ"をきっちり守る。味付けは見た目より淡白だ。一方の炒飯はラードたっぷりでパンチがあった。スープが薄味なのもありがたい。

kitao3_05.jpg

 黙々と食べる。常連客たちも静かに食事に集中しているようだ。動きに一切無駄がないのは、量が多いため、せっせと食べないと麺が伸びるからか。
 この時間からヘビーな中華を食べる姿が似合うのは若者のはずだが、店内はオヤジだらけである。きっと、「今日は味喜で昼メシだ」と決めてきたのだろう。いつもの味と雰囲気を求めて、ごく自然に足がむくのだ。少し早めに来るのは、昼休みになると混雑することを知っているからに違いない。20年や30年通いつめたファンがひしめいていそうである。「味喜」のレギュラー選手たちと同席できて光栄だ。
 宮田さん、5分で炒飯完食。遅れて僕もサンマーメンを完食。それを待っていたかのように新しい客が入ってくる。店がフル稼働するランチタイムは目前だ。

●味喜
営業時間 11時半~17時
定休日 水、木
住所 鎌倉市大船1丁目15ー15
電話 0467-46-7669

LINE
Twitter
facebook
google+
hatenablog
北尾トロポートレート
北尾トロ
1958年福岡県生まれのライター。体験・見聞したことをベースに執筆活動を続けている。趣味は裁判傍聴と狩猟。著書に『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』『夕陽に赤い町中華』など。FMまつもと「北尾トロのヨムラジ」パーソナリティも務める。長野県松本市在住
著者のご紹介
mr.ブラーン
佐藤淳一ポートレート
乗らずにいられない、懸垂式モノレールの魅力
佐藤淳一
ドボク+動物のかけもち写真家
宮田珠己ポートレート
湘南モノレールはどのぐらいジェットコースターなのか
宮田珠己
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
宮田珠己(続編)ポートレート
5つの面白レールを1日で。ゆかいなのりもの大冒険!
宮田珠己(続編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
村田あやこポートレート
路上に潜む異世界を求めて ー湘南モノレール沿線 路上園芸探索ー
村田あやこ
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(続編)ポートレート
湘南モノレールから歩いていける森巡り
村田あやこ(続編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(変形菌編)ポートレート
ルーペの向こうのちいさな世界
村田あやこ(変形菌編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(大船系植物編)ポートレート
「大船系」植物と玉縄桜~知っていますか?大船生まれの植物たち~
村田あやこ(大船系植物編)
太田和彦ポートレート
大船で飲む
太田和彦
作家。旅と酒をこよなく愛する
八馬智ポートレート
土木構造物としての湘南モノレール鑑賞術
八馬智
ドボクの風景を偏愛する都市鑑賞者
西村まさゆきポートレート
湘南モノレールの昔と今を比べてみる
西村まさゆき
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(続編)ポートレート
開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅
西村まさゆき(続編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(車両基地編)ポートレート
大人のモノレール車両基地見学記
西村まさゆき(車両基地編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
大船ヨイマチ新聞ポートレート
よい街 オーフナ
大船ヨイマチ新聞
大船のフリーペーパー。昼は「良い街」夜は「酔い街」。
皆川典久ポートレート
地形マニアと鉄ちゃんの凸凹乗車体験記〜湘南モノレールに乗って〜
皆川典久
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
皆川典久(続編)ポートレート
湘南モノレールに乗らずに
皆川典久(続編)
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
能町みね子ポートレート
ほじくり湘南モノレール
能町みね子
肩書きに迷いつづけ、自称「自称漫画家」。散歩好き。
ドンツキ協会ポートレート
ドンツキクエスト in 湘南モノレール
ドンツキ協会
ドンツキ協会は東京の路地の町、向島を拠点に、袋小路『ドンツキ』の研究に取り組む団体。
大谷道子ポートレート
湘南モノレール運転士インタビュー 「運転する人どんな人」
大谷道子
ライター・編集者。
井上マサキポートレート
湘南モノレールの「まっすぐ路線図」を鑑賞する
井上マサキ
路線図を鑑賞するライター
井上マサキ(ぶら喜利)ポートレート
ぶら喜利
井上マサキ(ぶら喜利)
路線図を鑑賞するライター
鈴木章夫ポートレート
湘南モノレールバー人図鑑
鈴木章夫
誰かをちょっとだけびっくりさせるのが幸せ。かまくら駅前蔵書室(カマゾウ)室長
二藤部知哉ポートレート
ソラdeブラーンdeラーン
二藤部知哉
沿線在住のんびりブラーンランナー
いのうえのぞみポートレート
湘南フォトレール カメラを持って湘南モノレールに乗ろう!
いのうえのぞみ
モデル・タレントで世界一周を目指すカメラマン
大村祐里子ポートレート
フィルムdeブラーン
大村祐里子
フィルムカメラをこよなく愛する写真家
川口葉子ポートレート
モノレールdeカフェ散歩
川口葉子
都市散歩と喫茶時間を愛するライター、喫茶写真家。
松澤茂信ポートレート
湘南別視点ガイド
松澤茂信
東京別視点ガイド編集長。珍スポットとマニアのマニア。
川内有緒ポートレート
湘南トライアングルをめぐる旅
川内有緒
ノンフィクション作家
田中栄治ポートレート
MonoTube
田中栄治
地上と空のスピード感を追い求めている素人カメラマン
三土たつおポートレート
本物の車内アナウンスが楽しすぎた。
三土たつお
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
三土たつお(続編)ポートレート
湘南モノレール風景図鑑
三土たつお(続編)
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
杉浦貴美子ポートレート
食べる!湘南モノレール -湘南「地形菓子」制作奮闘記-
杉浦貴美子
地図・地形好きライター
今泉慎一ポートレート
〝もののふ隊〟駅前砦にあらわる
今泉慎一
旅・歴史・サブカル好き編集者兼ライター
ワクサカソウヘイポートレート
車窓の冒険
ワクサカソウヘイ
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
ワクサカソウヘイ(夜編)ポートレート
夜になると 湘南モノレールは
ワクサカソウヘイ(夜編)
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
半田カメラポートレート
大船観音の劇的楽しみ方
半田カメラ
大仏写真家
遠藤真人ポートレート
ジェットにGO!GO!!
遠藤真人
モノレールに敬礼!鉄道写真バンザイ!
石川祐基ポートレート
湘南モノレール「もじ鉄」旅
石川祐基
グラフィックデザイナー。鉄道と文字が好きな、もじ鉄。
大竹聡ポートレート
腰越で飲む
大竹聡
酒と酒場をこよなく愛するフリーライター
荻窪圭ポートレート
道標をきっかけに江の島まで古道を辿る
荻窪圭
老舗のデジタル系ライター。古道・古地図愛好家。
松本泰生ポートレート
湘南モノレールが見える階段を探して
松本泰生
階段研究家
大山顕ポートレート
湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く
大山顕
ドボクフォトグラファー
田代博ポートレート
湘南モノレールと富士山
田代博
富士山遠望鑑定士。ダイヤモンド富士ハンター。
北尾トロポートレート
町中華タウン大船をゆく
北尾トロ
町中華探検隊隊長
喜清みずほポートレート
失われた 記憶をたどる まぼろしの遊園地「江の島龍口園(えのしまりゅうこうえん)」
喜清みずほ
鎌倉観光ボランティアガイド
宮田珠己(龍口寺編)ポートレート
龍口寺の龍と、謎の仏像
宮田珠己(龍口寺編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
加門七海ポートレート
江の島怪談闇歩き
加門七海
作家
中野純ポートレート
江の島怪談闇歩き
中野純
負の走光性がある、闇歩きガイド
宮田珠己(空の駅編)ポートレート
湘南江の島駅は、日本一高い駅だった!?〜日本一、地上高が高い駅はどこか?
宮田珠己(空の駅編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
モノ喜利(井上マサキ)ポートレート
モノ喜利
モノ喜利(井上マサキ)
めざせ!最優秀ブラーン賞
ヴッパータール空中鉄道座談会ポートレート
ヴッパータール空中鉄道について思いっきり語る
ヴッパータール空中鉄道座談会
ヴッパータール空中鉄道に乗車した人たち
モノ散歩ポートレート
モノ散歩
モノ散歩
沿線の魅力が集結!
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)ポートレート
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)