江の島への近道 湘南モノレール株式会社

なにげないデザインや記号に隠された意味を知る大人たち

0101.jpg台車を見学する一行(三土撮影)

 子供ならではの視点、というのがよくもてはやされる。

 子供の言った何気ない一言が、大人たちを感動させたり、感心させたりといった小話は掃いて捨てるほどある。

 ところが、そういった「ならではの視点」をもった人は、大人にも多い。むしろ、子供の突発的な言葉よりも、大人だからこその、理屈をわかった上での視点や疑問は、意外性やおもしろさがあることも多い。

 湘南モノレールは、子供向けの車両基地見学会をたびたび行っているが、子供たちの見学もさることながら、そういった「ならではの視点」をもった大人が車両基地を見学したら、なにが気になるだろうか?

 今回、そんな大人たちに、湘南モノレールの車両基地見学をしてもらうことにした。

 来てもらったのは、車両基地の写真集を出版するほどの車両基地フリークでもあるライター・フォトグラファーの萩原雅紀さん。そして、パイロンや電柱など、街角のものごとにやたら詳しく著書もある、ライター・三土たつおさん。両氏とともに、湘南モノレールの車両基地を見学してみたい。

0102.jpg右から、三土さん、萩原さん、筆者の西村

なんでもない模様にも理由が

 というわけで、湘南モノレールの車両基地にやってきた。湘南モノレール本社に付属する車両基地は、まさに機械工場そのものである。

0103.jpg右側の上に見えるのが、吊り下がったモノレールの底(三土撮影)

 モノレールの車両は、広島県の三原の工場で製造されて後、3日間かけてこの神奈川県まで回送され、この地で組み立てられてレールに吊り下げられ、それ以降は、引退するまでずーっとこの車両基地と、湘南モノレールの路線を行ったり来たりして、その生涯を終えることになる。

萩原「車体の底はメッシュなんですね」

湘南モノレール(以降・湘南)「そうです、軽量化のためにメッシュになってるんです。ただ、ここ一部分だけメッシュになってない部分がありますけれど、なぜだかわかりますか?」

0104.jpg軽量化のためのメッシュ仕様だが一部分だけメッシュではない(萩原撮影)

 たしかに、扉の下の一部分だけがメッシュになってない。これはなぜか。

湘南「これは、台車から車両を外して下ろしてメンテナンスするときに、台をあてる場所なんです」

 一同「へー」と唸る。

 モノレールの車両の構造は大きく分けて2つの部分に分けられる。駆動部分の台車と、客室のある車体部分だ。メンテナンスを行うときは、この2つを分離して行う。そのさい、車体を載せるための台に車体が直接あたる部分は、メッシュではなく、硬い作りになっている。ということである。

0105.jpg台と車体。台車と車両を分離するさいは、台をジャッキアップし、車体を下から受ける構造になっている(萩原撮影)

 モノレールの底の、メッシュかそうでないかの模様の違いなど、今まで誰も気にしたことがないかもしれないが、この、なんでもない模様ひとつにもそれなりの理由が隠されているのだ。

車両番号は、会社が勝手に決めている

 ふだん、モノレールの車体を、下から上からしみじみと鑑賞する機会はなかなかない。

 下からしげしげと眺めると、いろいろと気づくことがある。

 先程の車体の底がメッシュになっている。というところもそうだが、車体にいろいろ書いてある記号も気になる。

0108.jpg形式の5600の由来は?(三土撮影)

湘南「列車は、重さや定員、所属などを必ず車体のどこかに書かなきゃいけないんです。法律で決まってます」

――これ、モノレールに限ったことではないんですが、列車というのはこの形式、たとえばこれなら「5600D」ってなってますが、この番号ってどうやって決めてるんですか?

湘南「番号は必ず付けなきゃいけないと定められていますが、なんでもいいんです」

三土「ということは会社ごとに勝手に10000系とか、5000型とか自由につけていい? 適当でもいい?」

湘南「適当というわけでもないんですが、懸垂式モノレールは、昭和30年代に名古屋の東山動物園で運行したときの車両が、200形だったので、湘南モノレールの車両の初号機は300型なんです」

0109.jpg300形(湘南モノレール)

萩原「同じメーカーなんですか?」

湘南「はい、三菱重工です」

――東山動物園時代のモノレールよりも、ちょっと進化した車両が投入されたんですね。でも、この車両は5600ってなってますよ。桁が増えてる。それはなぜ?

湘南「このまえに500形というのがあったんですが、それの運用が終わって、次の形式になるんで一桁増やして、5000というふうにしたんです」

0110.JPG500形(湘南モノレール)

萩原「そこで700とかに行かなかったんですね」

湘南「行かなかったんです。5000は大枠の構造は一緒なんですが、アコモデーション(車内設備)や、制御方法も抵抗制御からインバータ制御になったりして、変わりました。それで桁を増やしたんです」

――これがもし、もっと大きな変化が加わるとしたら、今度は10000形とかになるんでしょうか?

湘南「なるかもしれませんが、桁が増えると書類上の管理がちょっと煩雑になるかもしれませんね」

萩原「番号にアルファベットを使ったりはできますか?」

湘南「番号自体にアルファベットはちょっと調べないとわかんないですが、国鉄なんかはイロハでつけてましたよね、キハとかクハみたいに」

一同「あーなるほど」

 列車の型番が、各社それぞれバラバラで、統一感がないのは、会社ごと独自の番号を付けているためであった。

次回は「モノレールは電車とバスのハイブリッドと看破する大人たち」です。

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西村まさゆき(車両基地編)
ライター。鳥取県倉吉市出身、東京都中央区在住。めずらしいのりものに乗ったり、地図で見た気になる場所に行ったり、辞書を集めたりしています。著作『ファミマ入店音の正式なタイトルは大盛況に決まりました』(笠倉出版社)ほか。移動好き。好物は海藻。
Twitter:https://twitter.com/tokyo26
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