江の島への近道 湘南モノレール株式会社

第二回 いざ変形菌探し スタート

6月某日。変形菌探しの舞台は鎌倉中央公園。

大船から湘南モノレールに乗り、湘南町屋駅で下車し公園へ向かった。

前日はジメジメした天気だったが、この日は晴れ間も見えていた。雨が降った後の晴れ間はネバネバした変形体が、胞子を携えた子実体へと変化するので、さまざまな子実体が見られるチャンスだそう。期待が高まる。

鎌倉中央公園は、園内に「谷戸」の地形や昔ながらの雑木林が残っている。

谷戸とは、台地や丘陵地が侵食されてできた谷あいの低湿地のこと。鎌倉にはこういった谷戸が多く存在する。

pic2-1.jpg公園マップ

変形菌探索隊一行がまず目指したのは、入口からほど近くの「子供の森」。ここも谷戸の地形となっている。

pic2-2.jpg公園入口付近、遊具の奥が「子供の森」

境野さん曰く、こういった樹々に囲まれて適度に風通しが良い場所は、変形菌が見つかりやすいそうだ。

pic2-3.jpg「子供の森」の奥には谷戸の地形が広がっている

境野さんがおもむろに、散策路脇の斜面に目をやった。落ち葉や倒木などが積み重なったところが、狙い目らしい。

pic2-4.jpg落ち葉の中は変形菌の住処

ルーペを片手に次々と落ち葉や枯れ枝をめくりながら変形菌を探していく境野さん。その目線の先を追ってみるが、素人目にはただの落ち葉の山に見える。

「見つけた!」という声とともに、境野さんが落ち葉の山をかき分け、樹皮を取り出した。この上に変形菌が?!ぱっと見てもよくわからなかったが、じぃーっと目を凝らすと、樹皮の上に、たしかに小さな粒状のものが並んでいるのが確認できた。

pic2-5.jpg樹皮の上に並ぶシロウツボホコリ

うおぉー、これが変形菌ってやつか!

ルーペを近づけて見てみると、樹皮の上にしがみつくように、アイスバーのような形の子実体が連なっていた。

これは「シロウツボコホリ」という種類だそう。

その後も「これはジクホコリ」「これはサカズキホコリ」「これはホネホコリ」・・・と次々に変形菌をハントする境野さん。大量の落ち葉の中から変形菌を探し当てる嗅覚もさることながら、種類まで見分けられるのが本当にすごい。

pic2-6.jpgジクホコリ。よーく見ると虹色をしている(撮影:宮田珠己)

pic2-7.jpgサカズキホコリの仲間。その名の通り盃のような形。

pic2-8.jpg白い粒状のホネホコリの仲間

pic2-9.jpgフサフサしたオオムラサキホコリの仲間

pic2-10.jpg卵黄みたいで美味しそうなホソエノヌカホコリ。これは未熟な子実体だそう。

pic2-11.jpg黒ごままんじゅうのようなコマメホコリ

わずかな範囲で、これだけたくさんの種類の変形菌がいるとは。色や形のバリエーションも様々だ。

ちなみに変形菌の名前には、末尾に「〜ホコリ」が付いている。これはホコリのように胞子が舞うことからついたと言われているらしい。

pic2-12.jpg聞きなれない名前の連続。ポストイットで名前をメモしていく。

人生初・生の変形菌。ルーペで拡大してじーっと見ていると、小さな子実体一つ一つの精巧なつくりが目前に迫ってくる。葉脈や樹皮のひだのきめ細やかさにも驚く。その視界の中を、時おり蟻やダンゴムシが横切っていく。人間から見ると小さな蟻やダンゴムシも、変形菌と比べると巨大生物だ。

肉眼だと指先ほどのサイズの中に、こんなに緻密な世界が広がっているとは。

それを見るだけで楽しい。

〈変形菌観察ことはじめ・ワンポイントメモ〉
・雨が降った後の晴れ間が観察にオススメ
・落ち葉や倒木が積み重なったところを探してみよう
・じっくり観察するのにルーペは必須アイテム
・変形菌の名前を書き留めておくのにポストイットは便利

参考文献:
『観察から識別まですべてがわかる!変形菌入門』(川上新一・新井文彦・高野丈/文一総合出版)
『粘菌生活のススメ: 奇妙で美しい謎の生きものを求めて』(新井文彦・川上新一/誠文堂新光社)

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村田あやこ(変形菌編)
路上園芸鑑賞家。福岡県生まれ。大学では地理学を学ぶ。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。植物への興味が尽きず園芸装飾技能士の資格も取得。『街角図鑑』(三土たつお編著・実業之日本社、2016年)に路上園芸のコラムを寄稿。好きな植物はアロエ、シェフレラなどの丈夫な熱帯植物。TwitterInstagram @botaworks
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