江の島への近道 湘南モノレール株式会社

路線は一本でも、路線図はひとつじゃない

路線図が好きで、駅に出かける用事があるとついつい見てしまう。その魅力のひとつは、縦横無尽に入り乱れる「線」だ。例えばこんな感じ。

001.jpg(東急日吉駅にて)

多くの路線図は、路線や海岸線など全ての線が縦・横・斜め45度で描かれている。路線図は駅と駅の位置関係を把握するためのものなので、地図のように厳密に地形を再現しなくてもよいのだ。

つまり路線図は現実とかけ離れており、もはや「ファンタジー」と言っていいのである。ひとつひとつの線がゴチャゴチャと入り組んでいるのをぼんやり見ていると、ついつい時間を忘れてしまう。電車に乗っていて、ぼーっと車内に掲示してある路線図を眺めてしまう人もいるだろう。

さぁそんなわけで、湘南モノレールの路線図を鑑賞しようと思うのだが......

02.png

......見事にまっすぐなのだった。

そりゃぁそうなのだ。大船と湘南江の島を結ぶ全8駅を貫く湘南モノレールは、分岐もなければ乗り入れもない。自然、路線図は実直な一本道となる。大船から乗れば、必ずどっかの駅に着く。そこには躊躇も逡巡もない。全然ゴチャゴチャしてない。

しかし、だからといってシンプルな「まっすぐ路線図」に魅力がないかというと「否」である。路線図はその目的や用途によって、さまざまに形を変えるからだ。

「まっすぐ」にもいろいろある

例えば、大船駅の券売機付近を見てみよう。

003.jpg普通旅客運賃表(大船駅)

駅と必要な運賃が記されている運賃表は、その駅だけの「一点もの」であることに注目したい。「大船」が赤字で書いてある運賃表は、大船駅にしか存在しない。ここしかないのだ。レアものなんですよ。

加えて、湘南江の島から大船までの直線には、青から緑へのグラデーションがかけられている。これは海から山へと景色が移り変わることへのメタファーだ(考えすぎだとは思うけども)。

004.jpg沿線案内(大船駅)

さて、運賃表のそばには「沿線案内」もある。先ほどの直線とは異なり、斜め上から俯瞰した図になっている。ランドマークと最寄り駅が書き込まれており、路線図っていうかもう地図じゃん、と思うかもしれない。

しかし、線種に注目すると、地形が直線で、湘南モノレールが曲線で描かれていることに気づくだろう。地形も路線も全て直線で描かれると、見分けがつかなくなってしまうためだ。湘南モノレールが街の中空を滑らかに走る様子を、曲線で表現したようでもある。

オフィシャルのようでオフィシャルじゃない

券売機の横にもちょっとした路線図がある。

005.jpg他社線との関係(大船駅)

大船・鎌倉・江ノ島・藤沢の各駅との位置関係を示した路線図だ。図形の形状や文字組などから、恐らくOffice系ソフトで描かれたもの。先ほどの「沿線案内」のようにオフィシャルで作られたものではなく、駅員が自主的に作ったものではないかと推測する。

所要時間を表記する配慮から「ほら、斜めに突っ切れば乗り換え無しの14分で江の島に着くんですよ」という優しい声が聞こえるようだ。

また、江ノ電の「稲村ヶ崎」だけ途中駅が書いてあるのは、乗客から「このモノレールは稲村ヶ崎に止まりますか」と、よく問合せがあるからではないだろうか。

と、券売機付近の3つの路線図を見ただけでもこれだけ傾向が違うのである。

運賃表は運賃を、沿線案内は周辺のランドマークを、他社線との関係は問合せへの返答をと、それぞれ持たせる役割が異なる。役割が異なれば、載せる情報が異なる。情報が異なれば、路線図はさまざまに姿を変えるのだ。

路線は一本でも、路線図はひとつではない。湘南モノレールの「まっすぐ路線図」がいかに姿を変えるか、ひとつひとつ見ていこうと思う。

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井上マサキ
ライター。路線図研究家。新婚旅行で訪れたロンドンで路線図に目覚め、路線図を「図」として意識し始める。イベント「路線図ナイト」では、企業が作った路線図を「インディーズ路線図」と呼ぶなどして鑑賞。人からどこで乗り換えたらいいの?とよく聞かれるが、暗記しているわけではないので結局検索している。好きな路線図はロンドン地下鉄、プラハ地下鉄、福岡市交通局。Twitter(https://twitter.com/inomsk)&HP(http://www.inoue-masaki.com/
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